がん放射線療法パーフェクトブック(学研プラス)の執筆にあたり
看護師向けのメジャーな雑誌「月間ナーシング 2008年Vol28 がん放射線治療の実際と看護の」に執筆させて頂き、同雑誌の発行部数が多かったことから、同出版社より専門書として発行の「がん看護セレクションがん放射線治療が2012年10月に発売、2016年10月に改訂され、「がん放射線治療 パーフェクトブック」とし発刊されました。
以下、一部抜粋させて頂きます
口腔・咽頭症状:口腔・咽頭粘膜炎, 唾液腺障害のケア
Main Point
●生命維持に欠かせない食物の摂取・代謝・排泄の一連の流れは、入口から出口を通して行われており、その入口となるのが口腔・咽頭である。頭頸部がんの看護では,治療により栄養摂 取の「入口」が大きく障害されるという視点をもつことが重要である。
●口腔粘膜炎 (口内炎)・咽頭粘膜炎に対する看護師の役割は、歯科医,歯科衛生士を含む NSTチーム (NST: nutrition support team) と連携し、照射前から口腔内環境を整え、 ロ内炎の悪化を予防し、栄養管理をしていくことである。
●唾液腺障害に対しては、線量と照射される範囲を確認し, 口腔内乾燥の症状を予測した上で、 治療後の生活指導を含めたケアが必要である.
1.口腔・咽頭粘膜炎のケア
◎頭頸部がんの治療において口腔・咽頭粘膜炎を軽減させるために正しい口腔ケアを行い,治療の完遂を目指すことが重要である。
◎口腔・咽頭粘膜炎に関連して治療の完遂に影響を及ぼす因子として次の4つがある.
- 口腔・咽頭粘膜炎による疼痛コントロール
- 栄養管理
- 口腔粘膜の保護と再生促進
- 誤嚥性肺炎の予防
◎口腔粘膜炎および経口摂取に影響を及ぼすリスク要因を表1に、患者側のリスク要因を表2に示す。
【照射野の把握】
膜炎の経過
- 口腔全体が照射野に含まれることがあるもの:口唇がん,舌がん,歯肉がん,頬粘膜がん,中咽頭がんなど
- 口腔の一部が照射野に含まれるもの:下咽頭がん,上咽頭がん,喉頭がん (声門上がん) など、鼻腔や上顎の腫瘍でも口腔内が照射されることがある。
- 照射野の詳細については,第3章-2「頭頸部の放射線治療」を参照
【放射線治療の種類による口腔・咽頭粘膜炎の経過】
照射単独
- 10Gy前後で口腔内の乾燥とほてりが出現する
- 20Gy前後から口腔・咽頭粘膜炎症状が出現する
- 40Gyを過ぎるまで症状の増悪が続く
化学放射線療法(分子標準的薬を含む)
- 照射単独より症状は早期に出現、またその症状も増強される